6月の「この一曲」:金延幸子『青い魚』
- kita798
- 2024年6月2日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年6月11日
・劇場上映が今週までだというので、昨日の夕方「伊那旭座」へ映画『パーフェクトデイズ』を観に行ってきました。
スカイツリーを見上げる押上地区のおんぼろアパートに一人暮らす初老の男。仕事は公園の公衆トイレ清掃で、朝起きてから夜寝るまで、まったく同じルーティーンを繰り返す日々を、ただドキュメンタリーのようにカメラが追うだけの、何もドラマチックな展開は起こらない地味な映画なのですが、2時間強けっして眠くならず、暗く落ち込むこともなく、見終わって不思議と穏やかな満たされた気分で映画館を後にしました。
・主人公の平山(役所広司)は、毎日軽バンに乗って仕事場へ向かうのですが、昔集めたミュージックテープ(カセットテープ)を車のサンバイザーの上?に積み込んでいて、その朝の気分でカセットテープを選びカーオーディオに途中まで装填します。出発して暫くあと、スカイツリーを見上げた平山は、おもむろにカセットテープを最後まで押し込み「音楽」が(劇場にも)流れ出すという仕組みですが、この彼の選曲がめちゃくちゃ渋い!
最初の朝流れるのは、アニマルズの「朝日のあたる家」。朝だからね。でも決して明るい曲ではないです。
4日目の朝だったかな。印象的なベース(細野晴臣!)のイントロに続いて聞こえてきたのは、金延幸子さんの『青い魚』でした。車の中で流れた唯一の日本語の歌。これにはちょっとビックリ!
追加)平山が週末だけ必ず訪れるスナックのママ(石川さゆり)が、あがた森魚!のアコギ伴奏で日本語で唄うのは、先述の「朝日のあたる家」に浅川マキが日本語のオリジナル歌詞を付けた「朝日楼」です。

・ぼくは診察中、処置室に置いてあるラジカセから常時音楽を流しています。無音だと何だか寂しいからね。たいていは『おかあさんといっしょ』『ひらけ!ポンキッキ』なんかを流しているのですが、ときどき院長の趣味で勝手に強引に個人的お気に入りCDをかけることがあります。
昨年11月に、長野県下で初めて伊那市「いなっせホール」でぼくの大好きな浜田真理子さんのコンサートが開催され盛況のうちに無事終了し、ぼくはその余韻にずっと浸りたくて、浜田真理子さんのCD『NEXT TEARDROP』をエンドレスで毎日かけていたのです。
このCDにはカヴァー曲が2曲収録されていて、7曲目に伊那でも歌ってくれた隠れた名曲 とんちピクルスの「夢の中で泣いた」、それから3曲目に入っているのが、金延幸子「あなたから遠くへ」なんですね。
ちょうどこの曲が流れている時に、呼ばれて診察室に入ってきたおかあさん。娘さん(11ヵ月)のB型肝炎ワクチンの3回目接種でみえたのですが、おかあさんが突然「金延幸子さん!大好きなんです」と言ったのです。ビックリしました。
URCレコードから出た金延幸子『み空』が発売されたのは1972年の秋。日本のジョニ・ミッチェルと呼ばれていた金延さんはそのあとアメリカ人音楽プロデューサー(SF作家フィリップ・K・ディックの友人でもあった!)と結婚して渡米し音楽活動を中止してしまったので、まだ20代に違いないこのおかあさんが、どうして金延幸子のファンなんでしょう? 謎です。
ただ、以前「赤石商店」で開催された音楽ライヴに、赤ちゃんを連れて親子3人で聴きに来ていたのを何度か目撃しているので、夫婦そろってマニアックな音楽ファンなのかもしれませんね。こんどまた訊いてみよう。
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「青い魚」は、『み空』のB面1曲目(だからこそカセットテープで頭出しできるのです!)に収録されている曲で、A面がアコースティックなアシッドフォークで統一されていて、ぼくはA面中心にいつも聴いていたので、正直ロック調の「青い魚」という曲にあまり印象がなかった。
でも、映画『PERFECT DAYS』の中では「ここぞのタイミング」で挿入され、金延幸子さんのボーカルがめちゃくちゃカッコイイのです。
・「5月のこの一曲」をアップした時に、じつは「6月のこの一曲」はニーナ・シモンにしようと決めていたのです。
ところが、映画『PERFECT DAYS』で流れたニーナ・シモンの「Feeling Good」
が、あまりに圧倒的すぎてとても書けなくなってしまいました。ですので、また別の機会にしますね。